猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
電話をすればよかったのだけど、かけようとして初めて携帯の電池が切れているのに気がづいた。
いつから切れていたのだろう?
昨夜、蓮にかけた時に残量が少なかったのは確認していた。
新しくした機種は絢士さんとお揃いだから充電器を借りようと思っていたのにソファーに押し倒されて……
思い出して熱くなる頬を押さえた。
もしかして絢士さんの実家を飛び出してから…、ううんもしかしなくても、彼は電話をくれていたはずだ。
「ああ、もう!」
確かに陽人の言う通り今は二人の関係の方が絵の事よりも大事なことだ。
本当に本当に思い立ったら即行動は封印よ。
帰っていなければ、明日連絡しよう。
そう思って美桜は絢士のマンションに向かった。
タクシーを降りてふと見ると、マンションの入り口の植え込み花壇に彼が座っている。
「どうして?」
美桜が駆け寄ると、彼は苦笑いして立ち上がった。
「物臭兄貴が教えてくれた」
「陽人が?!」
「あれでも一応は心配してくれてるみたいだな。
美桜が自分の所に来たこととか珍しく口数多く話してくれたよ」
陽人ってば、蓮の味方みたいな事言ってたくせに。