猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「ごめんなさい。思い立ったら即行動する悪い癖は今後絶対しないって約束します」
頭を下げると髪が一房指に絡めとられて、そのまま彼の手に顔をあげさせられる。
「簡単に治ると思わないけど?」
ふっと彼の瞳が緩んだのを見て、美桜もほっと息を吐いた。
「連絡してって言っておいて通じないって何だよ。陽人から連絡くるまで、拒否されてるのかと思った」
「ごめんなさい、電池が切れてて……」
「もう謝らなくていいよ」
「それで?何を思い付いて飛び出した?物臭兄貴は美桜の勘違いだって言っていたぞ」
「それは……」
言うべき?
でも何て?
あなたのお母様があやのさんだと思ったのよって?
そしたら彼はそれでなぜ飛び出さなければならないか?と聞くはずよ。
「俺には言えないこと?」
私の持っている絵の持ち主は、あやのさんを愛していたからって言うの?
おじさまが口に出さない気持ちを勝手に言っていい?
「ごめんなさい」
「もうごめんなさいはいいから!!」
美桜の驚いた顔を見て、ハッとして絢士は頭を抱えて植え込みに座った。