猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「絢士何も言ってなかったけど、やだわサプライズ?あの子も来るの?」
「いえ、絢士さんには言っていません。今日は勝手に来てしまいました。すみません」
私の堅い言い方に、おや?っと一瞬彼女の顔が曇ったがすぐに笑顔に変わった。
「あら、そう。嬉しいわ、私に会いに来てくれて」
「これつまらないものですが……」
昨日絢士さんに聞いたお母様の好物、芋羊羮を渡した。
「まーいいのに!ありがとう」
絢士さんはお父様に似たのだろうか?
お世辞にもお母様似とは言えない。
あ、背の高い所がそうなのかな。
そんな事を考えると急に絢士が誰かに似ているような気がしてきた。
性格は日向と似ているのよね。
「ふふっ、私の顔に何かついてる?」
「す、すみません!絢士さんとはあまり似ていらっしゃらないなって思って……」
「あら?あの子何も言ってないのね」
「え?何がですか?」
「ううん、こっちの事だから気にしないで」
「はい……あ、初めまして、麻生美桜と申します」
「麻生?」
ペコッと頭を下げると彼女の口調が低いものに変わって驚いた。
「えっ?はい、麻生です?」
「あらやだ、私ったら。昔の男の名前聞いてドキッとしちゃった。ごめんね」
「い、いえ」
美桜はひきつった笑みを何とか返した。