猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「それで?」
何の前置きもなしで『それで?』って……
向かいのソファーに座る蓮をちらっと見て、美桜は心の中でため息をついた。
あれ?でも本当に疲れているみたい
「お仕事、大変なの?」
ハンサムな兄には別の意味での魅力もある。
母の実家である大河内家が代々繁栄しているのには、不思議な事にいつの時代も大河内家独特のカリスマ性に惹かれるものが後を断たないからと言われている。
私や陽人にも何かしらそういうものがあるらしいが、宮司のお告げによると、蓮は特にその血を濃く受け継いでいるらしい。
だから母の実家である本家は、蓮が生まれた時にものすごく養子に欲しがったって。
にわかには信じられないと思うけれど、妖怪オババが蓮に逆らわない所を見ると本当なんだと思う。
「おまえが心配することはないよ」
そう言う蓮の優しい笑顔は最近お父様にすごく似ていると思う。
「えっと……」
「奴はいつ俺に会いに来る?」
「来るのは先になりそう……えへへ」
「美桜、今はふざける気分じゃない」
「わかってる」
「ならば、それはどういう意味だ?」
「嫌われちゃったみたいなの」
ふざけてないし、冗談でもない、ついさっき起きた現実
「はっ?!おまえわかってるのか!?伯母さまとの約束まであと3ヶ月だぞ!今さら喧嘩なんかしてこじらせてる場合じゃないだろうが!」
「してないもん」
「は?」
「絢士さんと喧嘩なんかしてない!」
眉間に深いシワを寄せてから、呆れたように深い深いため息が蓮の口からこぼれた。