猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「別れたのか?」
「違うわ!」
やめて!
そんな言葉、間違っても口から出さないでよ!
「じゃあ何だ!?」
「それは……」
美桜は込み上げてきた想いをぐっと堪えた。
「どうした?何があった?」
蓮の優しい声にぐらりと視界が揺れる。
「お母様に…嫌われちゃったの……」
言った途端に涙が滝のように溢れだした。
さっきタキさんとやり取りした時は、悟られないように一生懸命堪えていたのに。
蓮が立ち上がって隣に座った。
「ほら」
『おいで』と広げられた腕に飛び込んだ。
「蓮……わ、たし……」
「しー、いいから」
しゃくりあげる美桜の背中を、小さい子にするように蓮はよしよしと上下にさすった。
美桜はこのまま兄の温もりに慰められて現実逃避したかったけれど、そういうわけにもいかない。
もちろん、嫌われたままではいられないしやらなければいけない事がある。
美桜は兄の胸を押した。
「もう平気」
「そうか?ひどい顔だぞ」
「わざわざ教えてくれてありがとう」
「飲むんだ」
『ほらっ』と、いつの間にか用意された温かい紅茶を素直に飲んだ。