猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「おまえのどこが気に入らないって言うんだ?
俺が乗り込んで話をつけてやる、美桜でダメなんて言うなら他のどの女だってダメに決まってる」
「親ばかならぬ兄バカね」
「俺は当然の事を言っただけだ」
「違うの」
「何が?」
「私がASO の……」
言い終わらないうちに蓮の顔が怒りに歪んだ
「金持ちが嫌いだからとか言わせないぞ!」
仕方のない事だと諦めているけれど、私達の外側だけで近づいてくる者もいれば、その装飾だけで毛嫌いされることもある。
「ううん、違うの。あのね…、私がお母さん麻生椿妃の娘だからダメだって」
「何だそれは?どういう事だ?母さんの知り合いだったのか?!」
「そうじゃないの、あのね……」
また溢れそうになる涙を堪えて、美桜は今晩の絢士の母とのやり取りを話した。
聞き終わった蓮は何かを考えるように首をかしげた。
「一方的だな。それで?奴は何て?」
「まだ話してない」
「どうして?」
さっき帰ってくる時に携帯の電源を落としている。
今日は絢士さんと普通に話せる自信がない。
「お母様も絢士さんに今日の事を話すつもりはないみたいで。だから私もまだ話さない方がいいかと思うの」
「言いにくいなら俺が奴と会って話すぞ?」
それはダメ。
絢士さんとは約束したんだもの。
美桜は首を振った。
「奴だって何かしら知ってるだろうから何なら力ずくでも……」
「やめて!!話す時は自分で言うから」
「わかったよ、余計な事はしない」
蓮は両手を前に広げて苦笑いした。