猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「あまり賛成できないが、おまえの事だ、止めても無駄ろうな」
「さすが、お兄様」
「まったく…、無茶するんじゃないぞ?俺の方でも少し調べてみるから」
「ありがとう」
「それから……」
蓮が言い出しにくそうな顔で、鬱陶しそうに前髪をかきあげた。
「零華伯母様が、一度会うべきだろう?と言っている」
「誰に?」
「おば様が決めた相手だ」
「どうして?!嫌よ!!っていうか、何で?嘘でしょう?本当に相手がいるの?!」
「落ち着け」
「そんなのおかしいわよ!その人だって話したことすらない女といきなり結婚なんて、どうかしてるわ!」
「美桜!!」
低いバリトンが部屋に響いて、思わずぎゅっと瞳を閉じた。
「おまえが伯母さまに啖呵をきったんだ」
美桜が恐る恐る開けると、想像通りの蓮の怖い顔。
「おば様はそんなおまえにむしろ情けをかけて、会わせておけと俺に言ってきたんだ』
「そんな……」
「おまえだってわかってるだろ、中身を重要視しなくても俺たちとならいくらでも結婚しようとするやつはいる」
「でもっ」
「わかってる、そんな事にはならないよな。だったら会って、そう伝えればいい」
「嫌よ」
「そう言うと思った」
蓮はふっと笑ってから、ドサッとソファーの背にもたれて片腕で瞳を覆った。
「いいよ、おば様には適当に言っておく」
「蓮兄さん……」
蓮の疲れた顔の一番の原因が自分の事だと、今さらながらに気が付いた。
「ごめんなさい」
「馬鹿だな、謝ることなんてないだろ。おまえが幸せになる為なら、俺に出来る事は何でもしてやる」
蓮がそう言ってくれるのは、年の離れた兄が抱く当然の感情だと思う事にしている。
でも、本当は少しだけ違う。
両親が亡くなってから、蓮は私と陽人を必死で守ろうとしてきた。
まるでその事だけが、重要な使命感のように。
わかっていて、あえて私はそれに甘える。
だって、
私が妹として出来るのはそんな事くらいだもの
「蓮」
「なんだ?」
「愛してるよ」
「ばーか、言う相手が違うだろ」
「違う意味だもんっ」
「あっ、こら重い!」
美桜はわざと体重をかけてよりかかった
だって、
大切な家族だもの