猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
おば様の告白②
口を開けたまま驚いて見つめる美桜に、志津果は話を続ける。
「東堂の会社が少し持ち直した頃、そうね戻って二ヶ月が過ぎた頃かしら。彼から大事な話があるって呼び出されたの。……何となくもうわかるわよね。そう愛している人がいるから婚約を破棄したいって言われたわ」
もう過去の事なのか志津果の顔は穏やかなのに、美桜の胸はちくっと痛んだ。
「私は直ぐには受け止められなかった。東堂が何も言わずに旅に出て……でも仕方ない事情とはいえ、戻ってきてくれたと喜んでいたらそれだもの」
美桜は痛む胸を押さえて、思いきって聞いた。
「あの……それでどうしてお母さんのふりをして綾乃さんに会ったんですか?」
「どんな方かどうしても会ってみたかったの、だから調べさせて、彼女がアイルランドにいると知って会いに行ったのよ。……すごく可愛らしい人だった、何も知らずに東堂が迎えにくるのを無邪気に待っていたのが、
…………許せなかった」
「志津果さん?」
「どうしても許せなかったの、私は婚約者で彼を信じて一年以上も待っていたのに。
彼女は出逢ってわずかな期間しか一緒に過ごしていないのに、あっさり私から彼を奪った。だからせめて私の存在を、婚約者がいたって事を知ってもらいたくて椿妃の振りをした……」
「そう…、ですか」