猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

「日本に戻った私は罪悪感と自己嫌悪でどうしようもなくなって、椿妃に全てを打ち明けたら、こっぴどく叱られたわ『どうして後悔するような事するの!』って」

言いながら椿妃は一緒に泣いてくれた。

「それで椿妃はすぐに絵を持ってアイルランドへ行ってくれたの。だけど彼女はもうどこにも居なかった」

「それじゃあ、どうやっておじさまに?」

「椿杞がアイルランドから東堂宛に綾乃さんの名前で送ったの」

「そうだったんですね。ならば、どうしておじさまと離婚したんですか?」

そこまでして結婚したおじさまと、どうして別れてしまったんだろう……

思い付いた言葉が考えなしに口から飛び出した。

「すみません!立ち入った事を……」

「いいわよ、何でも聞きなさいって言ったのは私なんだから」

「お二人が結婚したってことは、おじさまは志津果さんを選んだって事ですよね?」

幼い頃から知っている東堂家は、三人とも明るくて理想的な仲良し家族だったもの。
  
「そうね、最終的に東堂は私を選んでくれた。でもね、ダメだったのよ、心に刻み込まれた、たった一度の運命の出逢いには勝てなかった」

「そんな……」

「あの人の中から彼女は消えなかった」

志津果の笑顔に胸がぎゅっと締め付けられる

「おじさまは偽りの……」

「違うわ!美桜ちゃん、誤解しないで!彼が不誠実だった事は一度もないわ」

これまでみてきた東堂家が違ったものに思えて、美桜は悲しくなった。

「私は一番になりたかったの、好きで側にいたくて必死だったのに選ばれた途端に欲張りになってしまった。
彼の中の特別な位置にいたくて……」

「そんなの当然だと思います」

私だって絢士さんの一番でいたい。
心の中に他の人がいるなんて、絶対に嫌。

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