猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「ありがとう。でもね20年頑張ってみて、そこにはなれないことをやっと受け入れたのよ」
「東堂を憎めたらもっと楽だったのかも知れないわね……日向には申し訳ない事をしたと思っているわ」
それでも、私が見てきた東堂家に偽りはなかったって思う。
おじさまは志津果さんを愛しているって思いたい。
でも、これで疑問は解決した気がする。
きっと綾乃さんと親友だった絢士さんのお母様は事情を聞いていて、おば様が名乗ったお母さんの名前をおぼえていたんだろう。
あれ?なんだろう?
何かがすっきりしない……
あっ。
『綾乃さんが亡くなったっていつ知ったんですか?どうやって?」
「まったく美桜ちゃんは鋭いわね。そこで椿妃があの絵を好きだった事が出てくるのよ」
「それは?」
「椿妃はね、私に関係なく綾乃さんの絵を欲しがって、彼女を探していたのよ」
「どうしてお母さんはそこまでして?」
「実はね、綾乃さんの絵カトレアにあるのよ」
「嘘っ!?」
カトレアってお母さんと志津果さん、そして日向と私の通った母校の?!
「図書館の世界の絵本コーナーの壁、覚えてる?」
「狼と七匹の子ヤギ!」
思い出した!あのちょっと怖い絵!
作風が違うから気づかなかった。
でも確かに、言われてみればあの子ヤギたちは綾乃さんの描く世界だ。