猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「そうね、知らない仲ではないのでしょうから、二人のことは二人に任せて、私達は別の話をしましょうね」
いったいオババは何を考えているの
「嘘でしょう?」
思わず心の声が口から飛び出した。
二人で何か示しあわせたの?
「では」
蓮とオババに軽く会釈して西園寺は庭へ出る扉へ歩き出した。
こうなったら、はっきりさせるしかないと思ったので、掴まれた手首を外して彼の後についていく。
「美桜!」
心配だと思いっきり顔にかいてある蓮に、自分の不安を隠して美桜は笑ってみせた。
「平気よ、心配しないで。それよりもそっちを何とかしてね」
「わかってる」
狼狽えるんじゃないわよ!
この人に振り回されたのはもう過去!
美桜は西園寺の後ろを歩きながら心の中で呪文のように何度もそう唱えた。
外へ出ると日射しがたっぷりの良いお天気なのに、空気の冷たさを頬に感じた。
冷たい風が足元の枯れ葉を舞い上がらせて、季節がもう冬なんだと改めて身に染みた。
昨日まで常夏の島にいたと言うのに、
この温度差……
自分と前を歩く彼みたい
やだ、正に言い得て妙じゃない
つい忍び笑いがこぼれると、西園寺が急に立ち止まって振り返ったので、慌てて口をきつく結んだ。