猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「その着物、よく似合ってるな」
彼の笑みに美桜は『ふんっ』と鼻をならす。
「美桜は何を着ても華やかになるから、服を選らんでやるのも楽しかった」
「どれも私の好みじゃなかったけど」
つんけんした態度を崩さない美桜に、西園寺は笑いながら首を振った。
また歩き出すかと思ったら、一本だけ植えられている桜の木の側にあるベンチに彼は腰かけた
隣に座るのは嫌だったので、美桜は桜の幹に寄りかかった。
そんな私に苦笑いして彼は前を向いたまま話を始めた。
「あれから何度も電話していたのに、見事に無視してくれたな。美桜、あの時は気まずさを隠す為に調子に乗って冗談が過ぎたけど……」
「やめて、今さら何も聞きたくない」
「まったく相変わらず頑固だな。一回でも電話に出ていればこんな不意打ちにあわなかったのに」
「まさか!あの時からこの話は決まっていたと言うの?!」
「こんな話、いくら相手が天下のASO だからといっても、そう誰でも簡単には承知しないさ」
「あなたはどうして承知したの?」
「それは…、伯母さまは悪いことをしたって思ってるんだ」
「お話が見えません」
「一年前、俺たちを引き離した原因は自分だと思ってるんだよ」
「何を馬鹿なことを!」
話の展開に頭がついていかず、美桜は怒りと驚きをぶつけるために、あからさまな態度で彼の隣に腰かけた。
「いったい何が言いたいの?」
「1年前、伯母さまは『美桜を不幸にする相手は認められない!』ってすごい剣幕で俺を脅しにきたんだよ」
西園寺は当時を思い出したのか、ブルッと震える振りをした。