猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「いったい何の話をしているんだ!」
「まだ私に言わせたいの?」
「話が見えない俺に何を言えって言う?」
「いいわ、そこまでとぼけるなら私が思い出させてあげる。一年前、あなたはずっと私との結婚話を思わせ振りにしていた」
「それはさっきも言ったが会社が……」
「そうね、会社を助ける為にも私と結婚するのが一番だった。でも研究者の娘さんであなたを好きだった彼女を反故にできずうまくはぐらかしながら、お兄様に彼女を押し付けようとしていた」
「そんな馬鹿げた話どこから……」
「全部お二人から聞いたわ」
「何だって?!」
「私の嘘を聞いて私に何も価値がないってわかったあなたは、彼女とアメリカへ行ったのよ。私を地味でつまらない女だと言ったあの時の言葉はあなたの本心でしょう?今さら伯母さまのせいにしないで!」
「全部でたらめだ!」
凄む西園寺に美桜は怯むことなくその瞳を睨み返した。
「嘘つきはあなたでしょう!」
張り詰めた空気に白旗を上げたのは西園寺だった。
「兄貴はいつ君に?会社が危ない頃か?」
「いいえ、その少し前。あなたの二股がどうしても許せないって」
「丸々信じたのか?俺じゃなくて兄貴を?」
その口調に冷たい怒りを感じて美桜は歯をくいしばった。
「もちろん信じなかったわ」
「何故俺に言わなかった?」
「言ったでしょう、信じなかったからよ!そんなの嘘だと思いたかったから!……だから嘘をついたの」
「ふざけんな!!」
彼の大声に鳥が数羽バサバサっと飛び立ち、近くにいた人が二人を振り返った。