猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「大きな声を出してすまない……」
気まずそうにうつむく彼を見ると、膝の上の拳が白くなるほど強く握られている。
「今さら何を言っても後の祭りだけれど」
彼の顔は悲しみに満ちている。
「全部兄の策略だ。あの時、後継者問題も揉めててな。俺を推す声が社内に出てた。
だから君との結婚が決まれば、俺の方が断然立場が有利になると思ったんだろう。まさか兄がそこまで追い詰められてたとは気づけなかった。
……ちなみにその彼女はいま兄の妻だ」
「嘘よ、そんな……」
私はあの人の良さそうなお兄様に騙されたって言うの?
「正直に言えば、もちろん美桜にASO に助けてもらえるかも…とは考えた。だから俺は美桜の嘘を信じたんだ」
「やめて、そんな話は信じないわ。おかしいわよ、本当は何が目的なの?」
「目的なんかないよ、俺はただ美桜にもう一度会いたかっただけだ」
「信じないわ、もう二度と騙されないって回りにも自分にも誓ったの!」
「何を言われても仕方ない、でも騙したのは別れの時の暴言だけだ」
三年も付き合った人だから、
頭では彼が嘘をついていないとわかっている
それでも認めたくなくて美桜は全身でそれを否定した。
「違うわ、あなたは最初からASO の私が目的だったのよ……」
美桜は自分を守るように胸の前で交差した腕に力を込めた。