猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「あっ、そうそう!!麻生美桜さんだ」
「はっ?!何でおまえが知ってる?!」
「僕、同じ大学で一つ上なんですよ、はあ…相変わらずお綺麗ですね」
「え?彼女はおまえを知ってるのか?」
というか、おまえのが年上なのになんでさっきから敬語なんだよ。
「まさかー!僕の事なんて覚えてるはずがないじゃないですか」
何なんだ?
どうしてそんな夢見るような顔をする?
「神宮寺、話が見えない」
「え?」
「彼女は知らないがおまえは彼女を知ってる、それはどういう事だ?」
「え?だって麻生美桜さんですから。室長も知ってるんですよね?」
神宮寺のさも当たり前の様な言い方に、絢士の胸に不安の黒い雲がかかる。
「何を?」
「何を、って彼女の家は機械や自動車の…」
「ASO か!!」
頭をハンマーで殴られたような衝撃に、絢士の瞳の前が真っ暗になった。
「そうです、前社長が不幸な事故に遭われて、ご長男の蓮さんが引き継いだ時に、医療メーカーの東堂コーポレーションと提携して医療用の機械や手術ロボットの開発なんかも手掛けている、あのASO のお嬢様、美桜さんですよ」
確かにお嬢様だとは思っていたし、彼女もそれを否定した事はなかった。
だが、まさか……
「なんで気づかなかったんだ……」
れん…、そうか!麻生蓮だ。
カートレースに出ていたのをテレビで見たことがある。
「室長?!大丈夫ですか?」
「ああ……」
いや、大丈夫なわけがない。
知ってしまった真実に、ショックを隠しきれない。