猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「それにしても別れたって聞いてたのに、やっぱりそういう事になったんですね」
「そういうこと?」
「あの隣にいる男ですよ、西園寺光彦」
「西園寺?」
「はい、大学の時から美桜さんと付き合っていて、昨年二人は別れたって聞いたと思ったんですが、でも違ったようですね」
何を馬鹿なことを言ってるんだ?
美桜は俺の彼女だ、他に男なんていない
「まあ、血筋を考えるとあの男が相応しいですから」
「血筋?」
絢士の胸がドクっと嫌な音をたてた。
「ご存知ないですか?麻生美桜さんの母方はあの大河内家です」
「大河内家?」
【あの】と言われてもピンとくるものがない。
首を振ると、神宮寺が少し声を潜めた。
「はい。大河内家というのは古くは平安の宮家に繋がる華麗なお家柄で、家系には天皇家に嫁いだ方もいらっしゃるとか、巫女や陰陽師なんかの神事に係わる大役で財を成してきたとか、まことしやかな話がてんこ盛りなんですよ」
「はあ?だから?」
「ですから、ものすごく血筋に拘るんです」
何なんだよ、それ。
血筋とかいつの時代の話をしてる?