猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「ご用件は何でしょうか?」
「鶴吉屋さんのお話で察しはついていると思いますが、残念ながら美桜との将来は、あなたにはありません」
「それは美桜がASO の……」
「ふんっ!麻生家なんて関係ありません。財力は問題でないと鶴吉屋さんもおっしゃっていたでしょう」
「は?じゃあ何が?」
「あなたの両親の血筋が不明だからですよ。
戸籍上の父親がそうでないってことは言うまでもありませんが、母親ですら全く不明ではいくら美桜があなたを愛していても了承できません」
「そんな馬鹿な……」
っていうか、
戸籍上の父親が誰かもわかっているのか!
「美桜は見掛けはおとなしくて従順そうですが、誰に似たのか自分が信じた事は曲げず決して折れない頑固な娘です」
そうだよ、俺の愛してる美桜はそこがいいんだ。
「だから俺に彼女をあきらめろと?」
彼女がASOの お嬢様で身分違いだと言われるならまだしも、血筋なんて馬鹿げた理由で反対されるなんてありえないだろ?
何時代の話だよ
「私はあの子に嫌われていますし、妹にそっくりなあの子とは反りが合いません。だからと言ってあの子の幸せを望んでいない訳ではないのです」
「俺の血筋では彼女を幸せにできないと仰りたいのですか?」
「ええ、その通りです」
堂々とはっきり言われて、すごんだ絢士の方が面食らってしまった。
「鶴吉屋さんの話していた小説家の件は事実です。あの人は結香さんと結婚して幸せを手に入れました」
「それが?」
「清き血筋は更なる幸福を。悪しき血筋は恐ろしい不幸を。それが大河内家に代々伝えられてきた掟です」
「そんな馬鹿げた事……」
「過去にほんの数人逆らった者達がいます。その者たちが、どうなるかを身をもって実証してくれています」
「偶然では?」
「そう仰ると思っていましたのでこれを…」
A 4サイズのマニラ封筒を渡された。