猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「それをお読みなればわかります。それと榊さん、金銭的な釣り合いなどいう理由で麻生家が…、蓮が反対する事はないとわかるので言いますが、だからと言ってあなたが窮屈な思いをしないとは限らないですよ」
「それはどういう意味で?」
「あなたは賢い方の様ですから、ワタクシの忠告をよくご検討なさいな」
彼女はそう言って封筒を指差すと立ち上がった。
「あの子がどう思おうと、美桜を不幸にする事は必ず避けてみせますから」
堂々と宣戦布告して『ごきげんよう』と彼女は去っていった。
絢士はしばらく茫然として動けなかった。
衝撃の真実を知らされ、それを現実と受け止められず夢の中を漂っているように感じる。
「室長!何やってるんですか!披露宴が始まりますよ!」
神宮寺が慌てて駆け込んできて、我に返った
「披露宴?」
「何寝ぼけてるんですか!遅れますよ!』
そうか、同僚の披露宴に行くところだった。
「あれ?もしかしてどなたかと仕事の話でもしたんですか?」
神宮寺に言われて改めて自分が手にしているものを見た。
「……ちくしょう」
ここに紛れもない真実がある。
「えっ?!何ですか?」
「これは何でもない。それよりも急ごう」
絢士は神宮寺に続いて走りながら、マニラ封筒を握り潰していた。