猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

辛い決断

窓から射し込んだ日の光がクリスタルの猫に反射してキラキラと輝き、ソファーで眠り込む絢士を照らす。

「うっ、眩しい……」

絢士は片目を無理矢理開けて壁掛け時計を見た

「８時か……」

起き上がろうとすると、胸の上の紙がバラバラと床に落ちた。

「はあ……」

変な体勢で寝た為に身体が痛い。
それよりもずっと、頭と心がズキズキする。

これまでの人生で一番最悪な朝を迎えた。

テーブルや足元に散らばったその資料を見渡し、額に手を当ててまた短いため息を吐く。

昨日、午後５時過ぎに終わった披露宴のあと二次会に参加し義理を果たしたと思ったが、飲み直したいという神宮寺をはじめとした部下を邪険に出来ず、結局帰宅したのは深夜だった。

着替える間を惜しんで、美桜の伯母さんから渡された封筒の中身を開けた。

握り潰したせいでできた皺を伸ばしながら、まとめられていた一つを読み始めると、それは過去に大河内家の人間に起きた不幸が実際の新聞のコピーや診断書と共に綴られていた。

それは悲劇の連鎖だった。

ある人は事業の失敗、借金、隣家の火事の移り火による焼死。またある人は突然の不治の病のあげく交通事故による死。

どれも不幸な偶然が重なっただけと言えばそれまでだが、一族の掟を破った者ばかりがこの様な目にあっているとすれば、信じるのも無理はない。

「……しかも全部相手を残してだし」

もし美桜が俺を選んだら、不幸になるのは彼女のみだと、この資料は告げている。

信じるものか！

それを投げ捨てるともう一つの資料を開いた。