猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
美桜は帰りたい気持ちを押さえてリビングへ入った。
「絢士さん、サンドイッチを作ってきたんだけど、お腹空いてない……わよね?」
「そうだな、すまない」
「いいの、良かったら後で食べて」
「ありがとう」
紙袋を受けとると彼は中身を確かめもせずに、それをダイニングテーブルの上にポンと置いた。
別にいいわ、疲れているのよ。
美桜は寂しい気持ちを受け流した。
「結婚式、盛り上がったのね」
「ん?ああ、まあね」
絢士さんは自分の服を見下ろして苦笑いした。
「そこ座って」
美桜は素直にソファーに座った。
隣に座ると思った彼は少し離れて床に腰を下ろした。
もう、何なのよ!!
今日の絢士さん、おかしすぎるわ!
「美桜、昨日どこにいた?」
「え?」
思ってもみなかった質問に、ドキッとして思わず胸に手を当てる。
「俺の同僚の結婚式はザ・トキオだった」
「ええ!!」
なんて事!!
西園寺と一緒の所を見られていたのね。
同僚の結婚式だと聞いておきながら、
どうしてその可能性を考えなかったんだろう
でも、これで絢士さんがどうしてそんな態度なのかがわかったわ。
話の順番が変わるけど、誤解だとわかってもらわないと。
「私は……」
「そう言えば、なあ美桜 俺の部下 神宮寺っていうんだけど知ってるか?同じ大学で一つ上だったそうだけど」
あれ?話題を変えるの?
どうして?
「神宮寺さん……ああ!鶴吉屋さんの…」
答えてからハッと息を飲んだ。
神宮寺さんは私が何者なのか知っている……
口に当てた美桜の手が小さく震えだした。