猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「なんだよ、知ってるじゃないか」
「あの、絢士さん……」
「その神宮寺がさ、あそこにいるのは麻生美桜さんだ!なんて夢見るような顔して、美桜の事を話すんだよ
嗚呼、やっぱり……
こんなことって……どうしよう……
「俺も馬鹿だよな、どうして今まで気づかなかったんだろう。俺さお兄さん、麻生蓮のレース好きだったよ」
「違うの、絢士さん聞いて!」
「いいよ、美桜はわざと隠してた訳じゃないってわかってる」
その言葉を聞き、一瞬にして美桜の胸は喜びでいっぱいになった。
絢士さんは本当に、私がASO の人間だって知っても変わらないと言ってくれるの?
美桜は自分も床に降りて、同じ高さで彼を見つめた。
「そんな顔すんなよ、理性がもたなくなる」
「絢士さん、わたし……」
潤む瞳を堪えて笑うと、彼の顔が苦しげに歪んだ。
「ごめんな。俺、嘘つきだった」
よく理解できなくて首を傾げていると、絢士さんの謝る理由がじわじわと頭の中に入り込んできた。
「そんな……」
「どんな美桜でも離さない、って言ったけどそれは嘘だった……」
天国から地獄
まさにたった今つき落とされてしまった。
「なんで?いやよ、どうして?昨日の彼とは何でもないのよ」
「そうじゃない、俺には無理なんだ」
突き放すように彼は立ち上がって美桜の側から離れる。
「お願い……そんな事言わないで……」
見上げると、絢士は首を横に振る。
「どうして?」
「美桜を不幸にはさせられない」
「何を言ってるの?絢士さんがいれば……」
立ち上がって縋るように腕を掴んだけれど、彼は静かにそれを振りほどいた。
「悪しき血筋は恐るべき不幸に、だろ」
「どうしてそれをっ!誰に聞いたの?!神宮寺さん?」