猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「えっとね、実は前から絢士さんは誰かに似てるなって思っていたの」
美桜が日向を見ると、彼女はびっくりして自分の顔に手を当てた。
「えっ?私?私、あんな甘い顔してないわよ」
「でも性格は似てるでしょう?あなた達ったら、会ったその日に波長が合ってたし、悪いけど蓮と陽人以外の男の人にあんな風に接するひなは見たことないわよ」
「あらやだ、妬いてるの?」
「違うわよ!それに名前がね……」
「名前?」
昨夜、出会った時の事を思い出してもらった名刺を出して見たら、急にひらめいてしまった。
「彼のね、あやとってこう書くのよ」
美桜はサイドテーブルの抽斗から、初めて会った日にもらった名刺を出して見せた。
「嘘っ!」
名刺を持つ日向の手が細かく震えている。
「音が違うから気づかなかったけど、おじさまの東堂絢也の絢と同じでしょう?」
「絢也と絢士……」
「綾乃さんは自分の名前とおじさまの名前を重ねたんじゃないかしら……」
自分が綾乃さんだったら、きっとそうする。
「ねえ、みお?」
「なに?えっ!?ひな大丈夫?」
笑ってるの?怒ってるの?
複雑な顔をする日向に美桜は心配になる。
「兄なのかな?」
「……そうだと思う」
小さな声で肯定すると日向はベッドの上でおもむろに立ち上がった。
「絶対にそうよ!そうに決まってるわ!!実は私も榊さん笑うとパパに似てるって思っていたのよね!やだ!榊さんじゃなくてお兄様ね!」
「キャッ!ちょっと、ひな落ち着いて!」
大声で飛び跳ねる彼女の足を押さえた。
「あの……ひな?……もしかして喜んでるの?」
「当たり前でしょう!!私、子供の頃からみおがどれだけ羨ましかったか!」
肩を掴まれてぐいぐい揺さぶられる。
「ええっと……」
これは予想外の反応だわ、まさかこんなに喜ぶなんて……
「きゃーどうしよう!お兄様だって!」
親友の飛びきりの笑顔につい美桜も笑ってしまった。