猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
そうよ、絢士さんは親友のお兄さんなのよ
ううん!浮かれてる場合じゃないわ!
「ちょっとひな!!ねえ!浮かれてないで、どうしたらいいか一緒に考えてよ!」
「へっ?何を?」
「おじさまに伝えるべきよね?」
「当然じゃない」
「でも天国の綾乃さんはそれを望むかな?志都果さんは?知ったらどうなる?おじさまだって今更そんな事を知っても苦しむだけじゃないかしら?…、なにより絢士さんだって望むかどうか……」
ほらね、問題が山積みで頭の中がごちゃごちゃになる。
「みお、私を見て。半分だって血が繋がってるの!家族が増えるのよ!喜ばないはずがないじゃない」
「でも……」
「さか…違うわね、兄さんの事はわからない。彼が私達を拒否するなら、悲しいけどそれはそれで受け止めるわ。ママは……ママは傷つくわね、そして、自分を責めるでしょうね」
「そうでしょう!」
志都果さんはすでに十分傷ついているのに。
「でも、それはママが受けるべき罰よ。本来なら綾乃さんのものだったもの、お金では買えないものを奪ったのだから」
日向は自分が両親と過ごしてきた時間を思うと、榊さんに対して罪悪感を覚えた。
「だったら尚更!」
「ママには私がいるわ。綾乃さんに兄がいたように、
ママには私がいる、私が支えるわ」
「ひな……」
「パパは知ったら絶対に喜ぶと思う!ううん、このまま知らずにいるなんてパパが可哀想よ……だって本気で愛した人と間に出来た子供だよ?」
「そうね……ひなの言う通りかも知れない」
「かも知れないじゃなくて、そうなの!」
兄が過ごすはずだった父親との時間を返すことは出来ないけれど、これから築いてもらえたら…、きっとママも私も救われる。
日向はそうなって欲しいと心から切望した。
「わかったわ」
「さあ!そうと決まったら行くわよ!」
「どこに?」
「パパの所に決まってるでしょう」
「え?今から?」
「早く着替えて」
「もう、わかったわよ」
日向に急かされて美桜は慌てて着替えに行った。