猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「おいおい、なんだよ?美桜にそんな深刻な
顔されたら困るよ……」
言ってから東堂はハッとした。
「まさか!結婚するのか!相手は誰だ?」
「違います!違うからおじさま、落ち着いて!」
美桜は勢い込む東堂をなだめて椅子に座らせる。
「なんだ、脅かさないでくれ。では何の話があるんだ?」
美桜は東堂の隣に座って壁に飾られた猫の絵を見上げた。
さあ、始めますよ、綾乃さん。
いいですよね?
美桜は震えそうになる手を組んで握りしめた。
「おじさま、この絵の事なんですが」
「ん?確か少し前にもこの絵について何か言いたそうだったな?」
「ええ。実はこれと似たような猫の絵、綾乃さんの絵を見つけたんです」
「なんだって!?それは間違いないのか?」
「はい、この瞳ではっきり見ましたから」
「春の絵か?それとも冬か?」
「えっ?!おじさま、この絵が四部作なのをご存じだったの?!」
「四部作!秋の絵があるのか?!」
お互い知らなかった情報を前にして、気まずく黙りこんだ。
美桜が顔を上げると、視線を合わせた東堂が苦笑いした。
「参ったな……、今のは聞かなかったことにして、私は少し黙るとしようか」
「おじさま……」
「美桜の話を聞かせておくれ」
「わかりました」
美桜は何から話そうか考え直して、先ずは勝手に調べた事を謝ろうと思った。
「おじさま、私ハワイへ行って志都果さんから色々過去の事を聞いてしまいました。勝手なことをしてごめんなさい」
「志都果が話したのか?!私との事を?」
「はい、教えて頂きました」
びっくりした東堂の顔が次第に緩みだし、ついに声を上げて笑いだした。
「くくくっ。美桜には恐れ入ったな、おまえの頑固さと好奇心の塊な部分は蘇芳から受け継いだな!奴も今ごろ天国で笑ってるよ」
「それって喜ぶべき?」
少し頬を膨らませると、おじさまがぽんっと頭に手をおいた。