猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「もちろんさ。それで?志都果まで巻き込んで、この話はどこへ行くんだ?」
「おじさまは、母が綾乃さんを探していたのをご存知でしたか?」
「椿妃さんが?!いや、知らなかったよ」
東堂は笑いを引っ込めて瞳を丸くする。
「では先ずは、何故母が綾乃さんを探していたのかを、お話ししますね……」
本当は志都果さんが綾乃さんに対してしたことは私の口から言うべきじゃないって思ったのに、さっき日向に全部話すように説得されてしまった。
志都果さんの口からおじさまに話させる方が酷だって言われたら、折れるしか仕方ない。
「志都果がそんな事を……」
絶句して口に手を当てたまま、おじさまは瞬きもしていないんじゃないかと思うほど、しばらくじっとして動かなかった。
やがて『ふうーっ』と、長い息を吐き出して小さく笑った。
「だから綾乃が亡くなった事を蘇芳が教えてくれたんだな」
おじさまの口から初めて聞く【綾乃】という言葉の響きに、美桜の胸が切なく締め付けられた。
やっぱり……
おじさまは綾乃さんを愛していたんだわ
「蘇芳には日本に戻ってから、色々相談乗ってもらってたんだよ」
「そうでしたか。……おじさま、志都果さんの事を許せませんか?」
「いや、悪いのは私だから、志都果を責めるつもりはないよ」
「本当に?」
「いづれにしても、過ぎた事だ。今さら何が変わるわけでもない」
おじさまの顔に、いくつかの複雑な表情がみえたけれど、その言葉に嘘はないと思うことにした。
そう、おじさまの言うように、
もう元には戻れない遠い過去なのだから……