猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「なるほどな、まあ同じ男としてわからなくはない」
「よかった……」
さあ、ついに確信よ。
美桜はいったん瞳を閉じて、拳をぎゅっと握りしめた。
「おじさま、しっかり聞いてくださいね」
「なんだ?ここへきて改まって?」
「私はその日、別れ際、最後に絵の事を…、綾乃さんの事を話そうとしました」
「それで?」
「黙っていた彼が最後にこう言ったんです綾乃さんは……」
美桜は緊張で冷たくなった手をおじさまの手に重ねる
「綾乃は?」
「綾乃さんは……」
空気が一気に張り詰めた気がして美桜はごくっと唾を飲み込んだ。
「……俺の母親だ、って言ったんです」
「なにっ?!」
衝撃、東堂の身体を雷に打たれたような衝撃が走った。
「おじさま、彼は来年30歳になります」
「な…ん…だっ、て?」
ガタンっと派手な音と共に東堂が椅子から立ち上がった。
美桜の言葉の意味する先に、東堂のこれまでの人生が音を立てて崩れ始めた。
美桜が上着のポケットから名刺を取り出して東堂の手に乗せた。
「これは?」
「それで絢士【あやと】って読むんです」
「なんてことだ……」
東堂は頭を抱えてその場に崩れ落ちた。
「パパっ!!」
「おじさまっ!!」
奥から日向が慌てて出て来て、東堂を支えた。