猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「絢士が、……息子が来てますね?」
顔を綻ばせる二人におじ様は安堵したのか、
ディリアさんに項垂れるように抱きついた。
「おまえにそっくりじゃないか!」
イアンにバシッと背中を叩かれると、まだ会った事がないのに東堂は『いい男でしょう?』なんて言っている。
「彼はどこに?」
美桜がディリアさんに問いかけると、彼女は優しく笑って美桜の腕をとって中へ入った。
「いろいろ複雑で長い話があったのよ」
その部屋に入った途端、美桜はこの旅の目的を忘れて暫し余韻に浸った。
そこは広々としたダイニングだった。
コーヒーテーブルにロッキングチェア、見事なレース編みが縁に施されたテーブルクロスに、小花の生けられた花瓶……
大事に使われてきて幸せな家具たちから、心地よい空気を感じて、その場に立ち止まりうっとりした。
ふと、テーブルの上を見ると手紙が何通も無造作に広げられ、写真が何枚も散らばっていた。
何気なく近づいてその一枚を手にする。
「おじさま」
「なんだ美桜?大声を出して」
「これっ、」
そこにいたのは赤ちゃんを抱いて微笑む日本人の女性で、それは間違いなく……
「綾乃……」
「さて、何から話すかな」
最後に入ってきたイアンさんが、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。