猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
イアンが当時を思い出しながら話してくれたのは
あの日、綾乃が突然日本に帰ると言い出し、東堂を待つように言う二人の説得も虚しく慌ただしく帰国してしまった。
その後しばらくして、美桜の母 椿妃があの絵…夏の絵を持って訪ねて来たが、イアンもディリアも綾乃の消息についてなにも知らなかったので椿妃は一晩泊まって、日本へ帰って行った。
それから半年が過ぎた頃、綾乃さんから手紙が届くようになった。
いつもお世話になったお礼と近況報告だったのが、ある日届いた一通がとんでもない告白の手紙だったとイアンは小さく笑って東堂を見た。
東堂は瞳をそっと伏せた。
その後はテーブルに何枚も広がっていた写真と一緒に、思い出話や近況が綴られるようになったそうだ。
「最後に届いた手紙には、【もし絢士がここへ来たら本当の事を話してこれを渡して欲しい】そう書いてあったのよ」
そう言ってディリアは大切そうに【絢士へ】と書かれたクリーム色の封筒を東堂へ渡した。