猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「そうか……父親を恨んだりしないのか?」
「それもここへきて改めて思ったんですが、憎いとか許せないって思った事がこれまでも一度もないんです。 たぶん、母の洗脳ですかね?」
絢士はふっと笑ってから、真剣な顔になった。
「でも今は物凄く逢ってみたいです。
母の事を責めるとか今さら俺に対しての責任をとれとかそういうんじゃなくて、父さんの事を知ればもっと自分に自信がもてるって思うんです。
そうしたらもう一度彼女に会えるかも、なんて、未練がましい男ですよね?」
突然、後ろからガシッと右肩を掴まれた。
「はっ?!」
予期せぬ事に絢士は驚いて振り返った。
「30年前の私は若くて愚かだった……」
絞り出すような言葉を聞いて、絢士はハッとした。
「もっと本気で探せばよかった……馬鹿なプライドのせいでフラれたと思って探し続けるのをやめなければ……」
恐る恐るゆっくり顔を見ると、その人は静かに涙を流している。
男泣きする顔を背けることなく、まっすぐに自分を見る瞳を見返しているうちに、絢士の視界も大きく揺れだした。
「あ…あの、東堂…絢也さん、ですか?」
『ああ』と頷かれて絢士は腰が抜けたようにストンと椅子に座った。
「30年も放っておいて本当にすまなかった…、どうか許して欲しい」
下げられた頭をじっと見つめた。
あ。
つむじの位置がおんなじだ……
「くくくっ……」
絢士はだんだん込み上げてきた笑いを堪えきれず、ついには声を上げて大笑いした。
「それもここへきて改めて思ったんですが、憎いとか許せないって思った事がこれまでも一度もないんです。 たぶん、母の洗脳ですかね?」
絢士はふっと笑ってから、真剣な顔になった。
「でも今は物凄く逢ってみたいです。
母の事を責めるとか今さら俺に対しての責任をとれとかそういうんじゃなくて、父さんの事を知ればもっと自分に自信がもてるって思うんです。
そうしたらもう一度彼女に会えるかも、なんて、未練がましい男ですよね?」
突然、後ろからガシッと右肩を掴まれた。
「はっ?!」
予期せぬ事に絢士は驚いて振り返った。
「30年前の私は若くて愚かだった……」
絞り出すような言葉を聞いて、絢士はハッとした。
「もっと本気で探せばよかった……馬鹿なプライドのせいでフラれたと思って探し続けるのをやめなければ……」
恐る恐るゆっくり顔を見ると、その人は静かに涙を流している。
男泣きする顔を背けることなく、まっすぐに自分を見る瞳を見返しているうちに、絢士の視界も大きく揺れだした。
「あ…あの、東堂…絢也さん、ですか?」
『ああ』と頷かれて絢士は腰が抜けたようにストンと椅子に座った。
「30年も放っておいて本当にすまなかった…、どうか許して欲しい」
下げられた頭をじっと見つめた。
あ。
つむじの位置がおんなじだ……
「くくくっ……」
絢士はだんだん込み上げてきた笑いを堪えきれず、ついには声を上げて大笑いした。