猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「何コレ。すげーどっきり」
顔を上げた東堂は、息子がおかしくなったんじゃないかと心配になった。
「どうして俺がここにいるってわかったんですか?もしかしてずっと俺を探して?」
「そうだと言えたらいいんだが、すまない、君の存在を知ったのは三日前なんだ」
「は?」
「榊みゆきさんに、ここを教えてもらった」
絢士の笑いが引っ込んだ。
「みゆきさんはあなたを知らないって言ってたはずなのに」
「ああ、初めてお会いしたよ」
「話がみえないんですけど。一体誰が俺の存在をあなたに教えたんです?」
「美桜だよ」
「美桜!?彼女がなぜ……」
「美桜の店のオーナーは私なんだ」
「そうだったのか!!だから彼女は猫の絵をあんなに気にしていたのか」
「さっき話してくれた彼女っていうのは、美桜の事なんだろ?」
「あっ」
「美桜は私の親友の娘だ。あの子はずっとありのままの自分を愛してくれる人を探していたんだよ」
ありのままの自分……
だから素性を隠していたと言うのか
「私は綾乃と一緒になりたくて彼女を傷つけない為に周りから何も言わせないよう努力していたつもりだった。生まれや育ちじゃなく彼女を愛していたのに、愚かな先回りをして……」
その愚かさの代償はあまりに大きかった。
綾乃を失っただけでなく、かけがえのない息子との時間さえも失っていたなんて……
「今なら解る、もし綾乃に私の正体を話しても彼女はついてきてくれただろうし、どんな困難にも耐えてくれただろうと。愛していたら他には何もいらないんだよ。もう今の君にもわかるだろ?」
わかるに決まってる!
絢士の胸は後悔でいっぱいだった。
でも……
美桜を傷つけたことは取り消せないし、まだ全てを受け止める自信がないんだ……