猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
三ヶ月後
ー 三ヶ月後 日本 ー
「美桜、いい加減になさいよ、いつまでここにいるつもりです!」
「あら、お式までここに居てもいいと仰ったのは零華伯母様じゃありませんか」
「それはそうですけれど……」
アイルランドから戻った美桜は、自宅に帰らず大河内の本家に居候している。
威風堂々としたこの家は大正時代に建て替えられたというクラッシックモダンな建物で異国文化を思わせるオリエンタルな和風な造り。
中は驚く程手入れが行き届いていて、現代との調和がうまく取れている。
専属の大工さんがいて所々不具合が出ても、あえて現代風に作り直すことなく修復してきている。
ここなら誰も簡単に訪ねて来られないし、来たとしても会いたくないの一言で追い返すのは簡単だ。
オババの睨みは絶大だもの
別に逃げてる訳じゃないわ
私には時間が必要なの
慰めや励ましのない、失恋を癒す時間が
日向とは連絡をとっているし、新年の挨拶やパーティには出席して(オババとだけど)きちんと義務は果たしている。
それに先々週、具体的な理由は聞いてないけれど光彦さんが約束通り結婚を白紙にしてくれた。
心置きなく自己憐憫に浸れる環境だわ
「ですが、あなたは麻生の人間でもあるんですよ!それを大河内を楯に蔑ろにして。これ以上蓮さんの機嫌を損ねたって、私は知りませんからね!」
「伯母様は蓮兄さんが怖いのですか?」
怖くはないが、絶対に逆らわないくせに。
宮司が偉才と予言し尊ぶ蓮を誰よりも崇めているのはオババだもの。
「馬鹿をお言いなさい!そんな事があるはずがないでしょう。ただ、このままでは蓮さんも相手の方に会わせる顔がないと困るのではないかと思っただけです」
「え?何の事をおっしゃってるの?」
「勿論、あなたの結婚ですよ」
「だってそれは先日 白紙に……」
「ワタクシは春に結婚式をすると言ったはずですし、あなたも初めて会う人とでも結婚すると啖呵を切ったじゃありませんか忘れたとは言わせませんよ」
「嘘よ!そんな……」