猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

「やあ、美桜久しぶり」

「おじさま?」

「元気そうじゃないか?」

「冗談ですよね?」

「何がだい?」

「おじさまが私の結婚相手なんて……」

「ああ、それか。どうかな?前に蓮に言ったそうじゃないか、誰でもいいなら私にすると」

「それは……」

「私も志都果と別れて五年も経つし、椿妃さんの相手にと打診された事もあるうちの血筋は申し分ないはずだからね」

「おじさま、いい加減にしてください」

美桜の静かな口調に東堂は慌てて両手を上げて降参した。

「わかった、わかったよ!
今日は美桜に頼みがあってきたんだ」

「言ってくだされば私から出向いたのに」

「連絡しても返事がくるかわからなかったからな。
何しろアイルランドから勝手に帰って以来避けられているみたいだから」

「そんな事は……
あのおじさま、その後 絢士さんは元気ですか?」

美桜は自分から言っておいて胸が痛む。
まだまだ回復には時間が必要だと感じた。

「自分の瞳で確かめたらいいじゃないか?」

おじさまのケチ。

「今はまだ時間が必要なんです、そう簡単に前には進めません」

『そうか』って苦笑いして東堂はお茶をすすった。

「なあ美桜、今は色々大変なのはわかるが、頼みを一つ聞いてもらえないだろか?」

「絢士さんの事なら、」

「違う。店の事だよ」

ああ、私の大好きな【silver spoon】美桜の胸にチクッと別の痛みが刺した

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