猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「そのアホみたいな悩みは、パパの跡継ぎになれば解決するじゃない」
問題はそこなんだよ。
自分が何者だろうと、美桜を愛してると言いたかったのに。
この状況はないだろ。
まるで自分が東堂の人間だとわかったから、やり直したいと言ってるとは思われたくないんだ。
いや、待て。
だからって、東堂を継ぐとかそういう話は違うだろ。
「そんな単純なもんか!日向はどうするんだよ?」
「私?どうして私が関係あるの?」
「はあ?」
お互い瞳をパチパチして『何を言ってる?』と、顔を見合わせた。
「もしかしてパパのこと、やっぱり父親として認められないの?」
「いや、そんな事は」
「じゃあなに?」
「なにって……東堂は元々おまえのものだろ」
「は?いやいやいや……」
日向が笑いながら手を振った。
「この私のどこを見たら会社の社長になろうとしてるって思うのよ?帝王学なんて丸で興味なかったし、今さら受ける気もないわよ」
「だが、結婚相手を…」
「そこっ!」
「どこだ?!」
「兄さんが継いでくれれば、晴れて私は自由恋愛の身よ!変な見合いをせずに済むし、私を目当てに近づいてくる遺伝子がどうのとかいう小難しい男たちから逃れられるの」
「俺だって遺伝子なんてわからないし、小難しいやつらの相手なんか出来ない」
「今から勉強すればいいじゃない!」
「おまえがわかる相手と結婚すればいいだろうが!」
「嫌よ!」
「ダメだ!」
「何でよ!バカ兄貴!」
「はあ?おまえこそ、アホ日向!」
10センチのヒールを履いた彼女とはそんなに身長差が無いため、睨む目線が一緒だ。