猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「なんですって?あーやっぱり美桜には兄さんみたいな人は似合わないわ」
「なんだと!?それを言うなら、どうしておまえみたいな奴と美桜は親友なんだ?」
「なにそれ、意味わかんないっ!つべこべ言わずに
さっさと美桜を迎えに行きなさいよ!」
日向が絢士の肩を軽く押した。
「出来るもんならとっくにやってんだよ!」
絢士も日向の肩を押し返す。
「弱虫!」
「なんだと!」
「何よ、やる気?」
「そっちこそ、やるのか?」
日向がグーの拳を振り上げて、絢士が日向の腕を掴んだのと同時に地を這うような低い声が店内に響いた。
「兄妹喧嘩はやめるんだ!!」
二人がハッとして入り口を見ると、
仁王立ちした東堂がこっちを睨んでいた。
「「パパ……」「東堂さん」」
「日向!いい大人の女性がキーキー喚くんじゃない!」
「ごめんなさい」
絢士はシュンとする日向を見て含み笑いすると、それを見た日向がキッと睨んだ。
「それと絢士!」
「えっ」
「ああ?!呼び捨てにして何が悪い?おまえは私の息子だろ!」
「いえ、悪いなんて……」
凄む東堂に絢士は口をつぐんだ。
何か人が違うっていうか、もしかして本来の東堂はこうなんだろうかと絢士は怯んだ。
「大声で騒いでお客様が入ってきたら、どうするつもりだったんだ?」
「すみません」
頭を下げる絢士に横から日向があっかんべーをすると、絢士が歯を剥き出してから声に出さずに『じゃじゃ馬』と言った。
「頭きた!」
日向が近くにあったクッションを絢士に投げつけると、倍の強さでそれが投げ返ってきた。