猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
このまま頭がおかしくなりそうだ。
あの日に戻ってやり直せるなら、命どころか魂すらも惜しくない
美桜にそんな悲しい顔をさせずに済むなら、
何だってするから、どんな罰だって喜んで受けるから…
「もう戻れないんだな」
こんなに傷つけておいて、許されるはずがなかったんだ
手遅れもいいところだ
絢士はがくっと項垂れてその場に座り込んだ
「おめでたいやつだよ、俺は……」
ようやく気づいた現実に茫然とした。
「戻りたいと思ってるの?」
頭上から驚いた彼女の声がした。
「呆れるよな」
自分の愚かさに乾いた笑いが口から漏れる。
これから俺は
美桜なしでどうやって生きていけばいいのだろう
「私の夫としては生きられないのよね?」
「戻れるのなら、そんな馬鹿な事は二度と言わない。
一緒にいられるのなら誰に何て言われようと関係ない、美桜の夫として生きたいんだ」
「うそ……」
「嘘じゃない」
「……冒険や宝探しは…、どうするの?」
美桜は涙を堪えて精一杯強がった声を作った。
「そんなものは出来なくて構わない」
「どう…、し…て?」
「もう最高の宝物を見つけたんだから」
「宝物?」
「美桜だよ。母さんの手紙に書いてあったんだ、俺を幸せな気持ちにしてくれる人を見つけろって。それが宝物だって事だとわかったんだ」
絢士は美桜とほ日々を思い出して、穏やかに笑った。
「例え何かを成し遂げられなくても、美桜が側にいて俺を認めてくれればそれでいい」
美桜は嗚咽を堪えて、溢れる涙を必死でぬぐった。
「どうして?」
「愛しているからに決まってる」
「まだ…私を、…愛してる…の?」
「当たり前だろ」
絢士はむなしくなって瞳を閉じた。
「今さら遅いんだけどな……」