猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「夢じゃないよな?」
美桜はそう言う彼の腰に腕を回して、ぎゅっとしがみついた。
「あ、痛っ…、イタタタ……」
「えっ?!絢士さん?」
脇を押さえた彼に驚いて、美桜が離れようとすると再び強く抱き寄せられた。
「離れたらダメだ」
「でも」
「少し休めば大丈夫だから」
絢士は美桜を連れてバックヤードへ行き、二人でソファーに座った。
「何か飲む?」
「そんな心配そうな顔しなくても、ちょっと肋が痛むだけだから平気だよ」
絢士は何とか笑顔を見せた。
さっきまで気を張ってたから忘れてたけど、本当は肋骨がかなり痛む。
「私のせい?」
「まさか!俺はそんな柔じゃないぞ!」
「ごめんなさい」
「ああ、もう!ごめん、違うんだよ。絶対に美桜のせいじゃないから。これは邪悪な兄貴が……あっ」
「邪悪な兄貴って…、まさか蓮?!蓮に会ったの?それでそんな格好を?」
ここでアルバイトをするのに、ネクタイまでする必要はないのにって思っていたのよ。
「くそっ!」
「絢士さん!」
美桜はネクタイを引っ張った。
「はい、すみません」
「説明してください」
絢士はドサッとソファーの背にもたれた。