猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

エピローグ


エピローグ

大河内家ゆかりの神社の控え室に、二枚の猫の絵が並べて飾られている。

行ったり来たり落ち着かない東堂を尻目に、蓮はゆったりとソファーに座って絵を眺めていた。

「あと二枚あるんですよね?」

「ああ、春と冬だ」

「全部揃えて見たいですね」

「出来ることならとっくにそうしてる!」

「そうですか…、おじさま、少し落ち着いて下さい」

「落ち着いているとも!」

30年振りに逢えた息子が、娘同然の美桜と結婚すると言うのに落ち着いていられるか!

そんな東堂の内心の喜びと焦燥を読み取って、蓮はおかしそうに笑った。

「何を揉めているんです?」

紋付き袴姿で登場した絢士は渋い顔をした。

「極悪人が二人揃って……」

「父親に向かって人聞きの悪いことを言うんじゃない」

「義理の兄にその態度とはいい度胸だな、またやられたいのか?」

「ちっ」

当分言わずにはいられないだろうが!と絢士は心の中で悪態をつく。

俺も美桜もすっかり周りに踊らされていた。

アイルランドから戻った時点で美桜の結婚相手は絢士に決まっていたのを二人が知ったのは、美桜を迎えに絢士が大河内家に行った時の事だった。

オババがしれっとした顔で美桜に『あら、欲にまみれたアホ男がご挨拶に見えたわね』って言った時の美桜の驚き様と言ったら……

コホンッと一つ咳払いをすると、二人が同時に絢士を見た。

「お兄さん、美桜の準備が出来たようです」

陽人が兄さんを呼んでくれと言っていた。

「そうか」

邪悪な兄貴がにやっと笑って、部屋を出て行った。

何だよ、だしに使ったのはバレバレかよ。

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