猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「美桜!大丈夫?!」
突然入り口から勢いよく駆けてきた日向にぎゅうぎゅう抱きしめられた。
「ひな?どうしたの?」
「どうした、じゃないわよ!大丈夫?」
「うん……」
うなずいてから即座に首を振る。
「ううん、嘘、ダメ、大丈夫じゃない」
言った途端に、胸の中で揺れていた水面が溢れだした。
美桜より10センチも背が高い日向が、よしよしって背中をさすりながら美桜をバックヤードの休憩室へズルズルと引きずって行った。
日向はメソメソしている美桜をソファーに座らせると、てきぱきと紅茶を入れて、飲みなさいと渡した。
「熱い……」
「文句を言わない!さ、何があったか話しなさいよ」
自分の紅茶にはたっぷりミルクを入れて、日向は聞く体制だ。
「どうしてわかったの?」
「陽兄が電話してきたのよ、美桜が暴れ馬になってるのに借りてきた猫にもなっているって」
「なにその怪文」
「陽兄にしてはすごく慌ててたのよ……笑ってもいたけどね」
変人陽人に慣れてる日向だから、冷静に判断してここへ来てくれたけれど、他の人なら理解できないだろうな。
「まずは暴れ馬について話して」
良い話と悪い話なら、悪い方からか。