猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
心の中は……
長閑な昼下がり、北海道へ出張にいっている彼から、夕方には戻るので店に寄るというメールが届いた。
絢士さんきっとまたおこりんぼを買ってくるわね。
「初めは渋い顔をするけど、きっとあなたも彼のお気に入りになるわよ」
机に置かれた陽人から渡された個性的な顔の猫のボールペンを見て、美桜は笑った。
来客を告げる音に入り口を見た美桜は、幸せな気持ちが一気に萎んでいった。
「美桜」
「零華伯母さま、どうなさったんですか?」
オババがここに来るのは二度目だ。
母の姉にあたる大河内零華(おおこうちれいか)は、その名の通り心まで凍りそうな冷たい瞳で美桜を見た。
「そんな露骨な顔をしないでちょうだい、姪の顔を見に来るのはいけない事なの?」
見た目は母と同じで美しい容姿なのに、性格のせいかどうしても冷たい印象が年齢よりも老けて見せている。
「いえ、そんなつもりは」
「まあ、相変わらず訳のわからない雑な店だこと。この椅子に座っても?」
了承する間もなく伯母は売り物の椅子の上に座った。
「それは……どうぞお座り下さい。いまお茶をお持ちします」
時間稼ぎ、応援、とにかくバックヤードに行って気持ちを落ち着けないと!
「結構よ!それよりここへ来なさいな、話があります」
美桜の作戦は無惨に散った。
「はい」