猫と宝石トリロジー①サファイアの真実

「美桜、あなたもう26になるんですよ」

いえ、まだ25ですと心の中で訂正する

「行き遅れもいいところです。麻生家はどう考えているか知りませんが我が大河内家では由々しきことです」

一般的な事をこの人に話しても、無駄なことはわかっている。

母の実家、大河内家は家系図を遡ると古くは鎌倉時代の宮家に繋がる華麗なもの。
母の母、亡くなった祖母は天皇家のお妃候補にも上がったことがあると聞いている。

「はい、申し訳ありません」

素直に謝るのが早くお帰り頂く近道だ。

「椿妃ですら25にはあなたのお父様と結婚していましたよ!大河内家の会合の度、これ以上私に恥をかかせないで頂戴!」

『だから私が引き取ったのに蓮さんは……』とオババはブツブツ言い始めた。

「そもそも椿妃が麻生蘇芳なんかに嫁ぐからこんなことになるのよ……」

オババは父の事も嫌いだった。

いいえ、少し違うわ。

自分は意にそぐわないお見合い結婚だったのに、母はこの世界に珍しい恋愛結婚でいつまでも仲睦まじかったから、その事に腹を立てているのよ。

遺伝子の不思議はここにも存在する。

たぶん、零華伯母様には受け継がれなかった優しくて朗かで物事の明るい面を見るって言う遺伝子は全て母が受け継いだのね

神様、これは悪戯が過ぎたのでは?

「これまでのいいお話、蓮が何だかんだと麻生家を持ち出すのでお断りしてきましたが、今回は絶対に会ってもらいます」

「伯母さま!?」

ついにそこまできてしまったの!?

「口ごたえは許しませんよ、これ以上あなたを愚かな娘にしておく訳にはいきません」

出た!!愚かもの発言!

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