猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「ですが……」
今、私には絢士さんがいる。
「会わないというなら、了承とみなしこちらで勝手に話を進めますから」
「お会いしたらお断りしてもいいのでしょうか?」
「美桜!!」
その金切り声に机の上の小人たちが揺れた。
「これは最後通告です。もう来年の春の式場は押さえてありますから、あなたはそこで結婚するのよ。相手が誰でもいいと思っているのならそうやって勝手にしてなさい、但し式場はキャンセルしません」
「それはどういう?」
「親戚、あなたの友人一同の前で初めて会う相手と婚姻を誓う事になるだけの話だわ……あら、それもまた愚かな娘に相応しいかも知れないわね」
良いことを言ったとばかりに、伯母様は自分の言葉を面白がっている。
「もし、お会いして相手の方に断られたら
どうしますか?』
「そんな馬鹿な男性がこの世にいるとは思えませんし、私の選んだ相手がそんな戯けたことを言うはずがありません」
「でも万が一」
「そうなれば仕方ありませんね、春までに他の相手を探すまでですよ」
美桜は唇を噛んだ。
オババは本気だ。
絶対に春には私を結婚させるつもりなんだ。
「零華伯母様……」
「今更そんな哀れみを求める顔をしないで頂戴!私は椿妃に代わってするべき事をしているまでです」
母は絶対にこんなことはしない!
ー『蘇芳さんに出逢えて私は幸運だったわ。でもあなたは私の娘だもの、私の様に必ず素敵な人を自分で見つけられるわよ』
いつも父との馴れ初めを話す母はキラキラした瞳に温かな笑みを浮かべて、最後にそう言ってくれたもの。