猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「春……春ですね!!」
「なに?」
「春までに自分で相手を見つけます」
「馬鹿を言うんじゃありません!」
「見つけられなかったら、その初めてお会いする方と結婚します」
「いいでしょう。そこまで言うのでしたら、やれるものならやってご覧なさい」
売り言葉に買い言葉、お互い一歩も引かない所は同じ血が流れているのだと美桜に思わせた。
「大事なのは何かわかっているわね?」
『愛です』美桜は心の中で答えた。
でも実際は、大河内家が大事にしているのは流れている血筋。それは嫁いだ子供たちにも永遠と続くもの。
嘘みたいな話だけど、大河内家はお告げを信じている。だからこそ、こうして美桜が麻生の人間だろうと関係なく口出ししてくるのだ。
「清き血筋です」
「わかっているのならいいわ」
伯母様はサッと立ち上がると蔑むような瞳で美桜を見た。
「春に愚かな娘を見させないで頂戴ね」
来たとき同様、美桜の近況を尋ねたり容姿に瞳を向けることなく自分の言いたい事だけを言って、妖怪オババは帰って行った。
お母様、お願い!
私にもラッキーが訪れるように助けて!
自分で啖呵を切ったものの、本当に見知らぬ相手と結婚させられるかも知れないと不安に押し潰されそうだった。