猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
絢士と神宮寺は羽田に戻り、会社に報告の電話を終えて今日は直帰することになった。
「室長?」
携帯をチェックしていた上司の顔が、見る見る綻んでいく。
「神宮寺、悪いが俺はここで」
「えっ?!俺、車で送りますよ?」
尊敬する上司は車を持たないが、実は神宮寺は老舗和菓子店の御曹子で国産の高級車を所有している。
神宮寺は次男な為に過度の期待もなく、伸び伸びと外でお勉強しているが、いづれは家業戻る時が来るかも知れない。
「電車で帰る、お疲れ!」
言いながら室長はモノレール乗り場の方へ足早に向かって行ってしまった。
「お疲れ様です」
神宮寺は短く息をはいて、荷物を持ち直した。
ちぇっ、夕飯ご馳走になろうと思ったのに。
ふと、視線を上司に戻す。
「あっ!あれは?」
室長に駆け寄る一人の女性。
謎の彼女発見!!
うわっ、遠目で見ても美人ってわかるよ!
「あれ?あの人どこかで……」
いや、気のせいか。
どうせ言ったところで、美人とはみんなどこかで会ったことがあるんだろうとか言われるに決まってる。
神宮寺は笑って頭を振り、東京ショコライスを買いに土産物のブースへ向かった。