猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
絢士が羽田に着いて携帯の電源を入れた途端、美桜からメッセージが届いた。
『モノレールにも乗れるのね!』
と書かれたメッセージは自分を迎えに羽田に来るというものだった。
腕時計で確かめると、ちょうど到着する頃だ。
絢士は急いでモノレール改札へ向かうとエスカレーターを上がって来る彼女が見えた
「美桜!」
人ごみをキョロキョロ探す彼女の視線が俺を見つける。
「絢士さん!」
その花が綻ぶ笑顔を見た途端に身体中の流れる血がたぎった。
駆け寄ろうと思った絢士は、その場から一歩も動けなくなった。
「おかえりなさい!」
駆け寄ってきた美桜が腕を絡めて不思議そうに絢士を見上げた。
「絢士さん?どうしたの?」
「いや、なんでもないよ、ただいま」
疲れているせいでコントロールがきかなくなっているのだと自分に言い聞かせる。
そうでなければ、この場で押し倒してしまいそうだ。
「このカード、モノレールにも乗れたのよ。すごい便利な世の中ね」
子供のようにキラキラした瞳がさらに絢士を煽る。
「そうか。ここまで迷わなかった?」
絢士は苦労して笑顔をつくった。
「もちろん」
「それよりどうしたんだ?俺が店へ行くつもりだったのに」
「早く…、…かったから」
雑踏に消されてよく聞こえない。
「ん?何て言った?」
「意地悪しないで」
「ごめん、本当に聞こえなかった」
「もう!早く会いたかったって言ったの!」
顔を赤らめて恥ずかしそうな顔に、絢士はついに言葉を失った。
もう作り笑いさえできない。
「どっちが意地悪だよ……」
「えっ?ちょっと!」
絢士はそれ以上なにも言わず、乱暴に美桜の手を引いて
モノレールの改札を通った。