猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
モノレールに乗っても品川に着いても絢士は無言で、話しかけても『ああ』とか『うん』とか上の空な返事ばかりで、美桜もだんだん無口になった。
改札を出て人通りの少ない場所で絢士立ち止まった。
「お腹は?何か食べたいものある?」
美桜は首を振った。
さっきまで空いていたのにすっかり食欲がなくなってしまった。
伯母様との事を忘れたくて、早く絢士さんに会いたかっただけなのに、余計なことをして怒らせてしまった。
「ごめんなさい」
「は?」
「大人しくお店で待っていればよかった」
「なんでそんなこと?」
美桜は怪訝な顔をする彼を見て、いかに自分が煩わしい事をしてしまったのかを思い知った。
「兄から悪い癖だと注意されているのに。私、つい思い立ったら何も考えなくて」
美桜はうつむいて涙をこらえた。
「どうしたんだ!美桜?」
「ごめんなさい、もう突然お迎えになんて行かないから怒らないで」
ポタッと地面に涙が落ちた。
絢士はようやく自分の態度が彼女を勘違いさせて、苦しめていた事に気がついた。