猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
みゆきの見ていない隙に、絢士は眉根を寄せて考えた。
今日は美桜の事を言うつもりはなかった。
いや、流れでそうなるかも知れないが、初っぱなからとは考えてはいなかった。
「……見つけたよ」
絢士は小さい声で呟いた。
「何を?」
みゆきは手元に集中したまま聞いた。
「だから……お姫様だよ」
「はっ?!」
がばっと顔を上げて、みゆきは迫力のある顔で絢士を凝視した。
「嘘っ?!何っ!どこの娘!!」
「落ち着いてよ!」
「落ち着いていられるわけないでしょ!中学生の頃からコソコソしてばかりだったくせにとうとう見つけたのね!」
「コソコソとかしてないし…」
なんだか、いけないことを見つかった気分で、絢士は所在なげに椅子を座りなおりした。
「今日ここへ来るの?!やだ!あたし着物これじゃダメよね!」
「みゆきさん、落ち着いてってば!彼女、今日は来ないから」
「なんで!?」
「なんでって……今日は話があるって最初に言っただろ?」
「職場が変わる話なら聞いたわよ!」
「他にもあるんだ」
絢士は立ち上がって『どうどう』とみゆきの肩を擦って自分の飲んでいたお茶を渡した。
渡されたコップを一気飲みしてみゆきは顎をあげて、絢士に話せと合図する。