猫と宝石トリロジー①サファイアの真実
「美桜」
「どうしたの?今日の絢士さん変よ」
離れて俺の顔を見ようとする彼女を止める。
「この絵は……亡く……なのか?」
「え?ごめんなさい、聞こえないわ」
彼女はぎゅうっと俺の胸を押して、心配そうな顔で下から覗きこんでくる。
「この絵、亡くなったお父さんのものか?」
「どうしてそんな事を聞くの?」
少し驚いた顔で答えを言わない彼女の肩を思いきり強く掴んだ。
「いいからっ!!答えてくれ!」
「違うわ」
美桜は掴まれた肩の痛みに顔をしかめながらも、大きく首を振る
「本当に?」
「だからどうして?」
今度はぎゅっと苦しいくらい強く抱きしめられて、美桜は段々不安になった。
「何かあったの?」
「この絵の持ち主と君は関係ないんだな?」
「関係?」
「血の繋がりとか……」
「なぜそんな事…」
無理矢理 絢士の顔を見上げて、美桜は続きの疑問の言葉をのみ込んだ。
「ないわ」
瞳を合わせて、しっかり否定する。
あるわけないわ、あの絵は東堂のおじ様のものなんだから。
絢士の身体から力が抜けて、ふうーっと長い安堵のため息がこぼれた。
「よかった」
泣きそうに見えた彼の顔に、いつもの笑顔が戻って美桜もホッとする。
「ねえ、絢士さん……あっ!」
突然、激しく唇を奪われて美桜は驚いた。
絵の持ち主に何があるのか、尋ねようとしたのにそれどころではなくなってしまった。
「待って……んんっ」
頭が追い付く前に、抱き上げられて机の上に乗せられた。
「ごめん」
もどかしげにワンピースのボタンをはずして彼の手が服の中に入ってきた。
「ちょっと…あっ……」
開かされた両足の間に立っている彼のもう片方の手が太股を這い上がってくる。
「んっ…ダメよ……」
その手を押さえると、切羽詰まった彼の瞳と
まともにぶつかった。
「抱かせて」
ドクンと心臓に甘い痛みが走った。
彼の色気を含んだ甘えるような瞳をまともに受けて否定できる女なんているはずがない。
「…ここ、で?」
了承したも同じの私の問いかけの返事で再開したキス。
何かわからないけれどぶつけられる彼の想いを、受け止めるしかないみたい
机の上に押し倒されて、美桜は観念した。
「お願い…奥の部屋に……」
美桜を抱き上げて、奥へ歩く間も何度も唇が落ちてきて、濃厚なキスをしかけてくる。
その激しさに美桜の身体にも熱く火がついた
扉を開けて、絢士はソファーに座るとそのまま美桜を膝の上に乗せた。