RUBY EYE
電話してしまおうか?
もう嫌、帰りたい。
そう言って、逃げ出してしまおうか?
月野は画面を見つめ、ボタンを押そうか躊躇する。
―――コンコン。
「月野?」
「ど、どうぞ」
この声は、美鶴だ。
月野は携帯を閉じて、イスから立ち上がる。
「今、時間はあるかしら?」
「だ、大丈夫」
「そう。では、いらっしゃい」
迷いながらも、月野は美鶴についていくことにした。
美鶴が連れて来たのは、自分の自室だった。
月野の部屋より何倍も広く、中央に置かれたベッドも大きい。
家具や調度品は、部屋の雰囲気に合っていて、センスの良さを感じる。
まるで、物語に出て来そうな程、素敵な部屋。
「お茶をお持ちしました」
椿が銀色のトレーを持って、部屋にやって来た。
テラスが見える白いテーブルに、小花柄のカップと、焼きたてのスコーンを置いていく。