RUBY EYE
十夜の歩調は早い。
足をもつれさせないよう、月野は必死で歩く。
「あ、海・・・・・・」
本当に海は近かった。
白い砂浜には、月野と十夜以外、誰もいない。
「逃げ出したいか?」
「・・・・・・」
月野の心を読んだかのような台詞。
答えれない月野に背を向けて、十夜は波が届かないギリギリまで近づいた。
「二度も襲われて、実の祖母には殺してくれと言われたんだ。逃げ出したくなるだろうな」
月野は砂浜を見下ろして、十夜の声を聞いていた。
耳に届くのは、十夜の声と、波の音だけ。
「逃げ出したって、誰もお前を責めない」
「・・・・・・綾織くんも?」
「あぁ」
月野が顔を上げると振り返った十夜と目が合った。
真っ直ぐに見つめて、月野はふと、口を開いた。
「赤い目」
「え?」
「怖いと思ったけど、すごく綺麗だとも思ったわ」