RUBY EYE

「びしょ濡れ・・・・・・」


海水で濡れた服が、肌にぺったりと張り付く。


「・・・・・・」


そんな月野から、十夜は視線を逸らす。

濡れた肌に、煽られそう。


「これじゃあ、電車に乗れないから、歩いて帰らないと」


砂浜に落とした、本の入った袋。

それを拾って、月野は十夜を見た。


「どうかしたの?」

「いや、なんでもない」

「あ、ありがとう」


自分が着ていた上着を、月野に差し出す。

幸い、上着はあまり被害を受けなかった。


「帰るか」

「うん」


歩きだし、月野は十夜の隣で囁く。


「まだ、ここにいるわ。・・・・・・今は、まだ」


十夜に聞こえたかどうかはわからないけど、月野は上着から香る十夜の匂いに、目を伏せた。










紅玉館に帰ると、椿が忙しそうに走り回っていた。


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